院長からのひとこと

自然治癒力の欺瞞

 私は、一年間徹して、ずっと半袖で施術していますので、患者さんから「元気ですね!」と、よく言われます。事実、自分自身とても元気だと思っていますし、少々疲れても直ぐに回復します。ですが、どこも異常ないかといえばそうではなく、最近マスコミなどでよく耳にされると思いますが、実は、「睡眠時無呼吸症候群」を三年前から加療中なのです。正確には、10代半ばから薄々気付いていましたが、当時はそんな病名の存在すら知らず、睡眠時の大いびきで友人に迷惑をかけたり、息苦しさで飛び起きたり、昼間に物凄い眠気に襲われ、自分の怠け癖が悪いのだと(少しはあるかも)自己嫌悪に陥ったりと、今思えば凄くきつかった〜!

 この病気は、肥満が一つのリスクとなります。確かに今の私は、運動不足と栄養過多による肥満ですが、20代前半頃までは逆にガリガリの骸骨で、「ちゃんと食べてるの?」と、皆が心配してくれるほど痩身でしたので、また痩せれば治るというものではありません。どうも自分自身で推測しますのに、生来歯並びが悪く、その原因は歯に比べ顎の骨が小さい所為があるみたいで、その為に舌根沈下が起こり、気道を狭めてしまうのではないかと思うのです。よって、今は睡眠時に空気圧を送ってくれる機械を装着して寝ていますので、呼吸がひどく妨げられることが無くなりましたし、症状に伴って高血圧になっていましたので(母や祖母も酷い高血圧ですので、この病気が原因とは限りませんが)、これに対しては薬を服用することで良い状態を保っています。
 しかしながら、同業の友人などから、「カイロプラクティックの人間が薬物に頼るとはけしからん!」というお叱りを受けました。確かに、カイロプラクティックに従事している方々のホームページなどを拝見しますと、「私たちは患者さんの自然治癒力を、最大限に引き出してあげるのが仕事です。」と、生物が元来持つとされる治癒能力によって健康を保つということが正しいことである。という理論に基づいて施術していらっしゃることはよく分かります。私もカイロプラクターの端くれですので、勿論私の行う施術も、自然治癒力に働きかけることをしていますし、私の持病に対しても、機械や薬には出来れば頼りたくはありません・・・。
 ですが、私が今までしつこいぐらいに述べてます「人間は本能の壊れた動物」という事実を考えますと、この「自然治癒力」というものは本能から発せられる訳ですので、自然治癒力も人間に於いては壊れているのです。それが証拠に、自然治癒力に組み込まれています免疫機能を例にとりますと、元来免疫とは自己の身体を守るべき機能でありますが、この機能が壊れてしまい、自分自身を攻撃してくるのが膠原病・リュウマチなどのアナフィラキシーショックと呼ばれるものなのです。また、注目すべきは、決して人間だけではなく、人間に飼われた動物も、元来野生ではなることのない糖尿病になるようです。自然治癒力の自然という言葉は、自然から受ける恩恵ということであり、自然を自分の思うように作り変えようとする人間に対しては、恩恵どころかその自然から罰が当たったとしか考えられません。
 このように、人間は本能が壊れたため、その本能に変わって自我を作り、またその自我が執着を呼び、そのまた執着から沸きあがる欲望が、自然治癒力まで狂わせてしまったのです。よって今現在、私のところに施術に来られている患者さんの多くは、西洋医学と併用していらっしゃる方が殆んどですが、人工的な世界で生活していくには、人工的な方法を用いなければならないのも事実です(私もそうですから)。しかし、いつかは人間の執着への暴走が、分別をしない智を持つことにより、程を知るようになれば、過度に薬物やオカルトへ偏らなくて済むようになるのではないかと思うのです。



                                  2012年 2月 3日
                                     大野 悟